協会の活動状況・会員からの寄稿

●東京商工リサーチ 「 TRS 情報」の 5 月 1 日版【嶌の目】に掲載されました、嶌会長の協会創立 10 周年記念事業「ファッションショー」の報告記事を紹介いたします。

ウ ズ ベ ク ・ フ ァ ッ シ ョ ン に 見 た 新 鮮 さ
――デザイン、センス、華麗さ――


 「いやー、本当に素晴しかった。同じ素材でありながらデザインひとつでこんなにも印象が変わるものかと目からウロコが落ちる思いでした」――ウズベキスタンのミルソビット・オチロフ駐日大使は、4 月 19 日に行なわれたファッション・ショーを見て本当に驚いた様子だった。この日は、私が会長をつとめる NPO 日本ウズベキスタン協会の 10 周年記念行事の第 1 弾として学校法人・文化学園(大沼淳理事長)の文化女子大学と提携してファッション・ショーを開いたのだ。

 文化学園では文化女子大学が春に、文化服装学院が秋に東京・新宿新都心の同学園でファッション・ショーを開くことになっている。同学園はファッション大学大学院も持つ日本最大、世界でも有数のファッション発信基地で全学生数は約 1 万 3 千人、うち世界約 30 ヶ国から約 1500 人弱の留学生が留学しているメッカだけに大変なお祭りだった。

 ショーは 18 、19 日の 2 日間行なわれ、18 日は 4 ステージ、19 日は 3 ステージで、1 ステージに 12 シーンがあり、それを繰り返すのだ。会場となった遠藤記念館は約 1500 人の観客席を用意できるものの、学生数が 1 万人を越し、学園祭となれば友人や親、ファッション・デザイナー関係者なども多く来るため、7 ステージぐらいは行なわないと大勢の人が見られないのである。

 日本ウズベキスタン協会のショーは各ステージの第 2 、第 6シーンで行なわれたから、合計 2 × 7 ステージの 14 シーンを行なったことになる。

 ウズベキスタンの布地はシルクを使ったアトラス織りが代表的なものだ。赤、青、黄、白、緑、黒、紫などの色を組みあわせた大胆で派手な織りが有名である。

 「昔、ある王がこの地の美しい娘にふさわしい布を織った職人に褒美を与えると布告。それを知ったある職人はこの世でもっとも美しいものは、虹だと思いつき七色の糸を工夫して織りあげた。それがアトラス織りの始まり」(中山恭子著・ウズベキスタンの桜)だという。

 それが今やその柄は多種多様だが、その明るさと華やかさは世界の織布の中でも群を抜くものといってよかろう。


――文化女子大とウズベク協会が協力――
 私たちの協会ではこの布地を使って現代的センスあふれるデザインによる衣装をつくれたら面白いし、ウズベキスタンや中央アジアの存在感をファッションという文化、ソフト面からアピールできると考えた。そこで文化女子大学の教授、学生達と話合い、協会がウズベキスタン、中央アジアから布地を調達し、学生にデザインと衣装づくり、モデルを担当してもらうことになったのだ。

 そのため昨年暮れから 2 回にわたり現地に赴き、現地の人が着用している参考用の服と素材となる数十種類の柄の織物を約 100 キロ弱ほど調達、その間に私が教授や学生達にシルクロードの歴史や文化、日本とのかかわりを講義し理解を深めてもらった。こうして 2 シーン用約 30 着弱の衣装ができあがり、4 月 18、19 日のショー開催にたどりついたのである。

 各シーンにはそれぞれテーマをもうけてあるが、ウズベキスタンのシーンは「繋がる」と「彩」。いきなり舞台背景の横長の超長大スクリーンにアトラス織りの布が波打ち、うねるような画像が映し出され、音楽に乗って現代的なセンスの衣装を着た学生モデルが次々と現われる。1 シーンに約 10 人、数分のショーだが、そのインパクトは強烈だった。

 こうしたショーを 40 年以上見続けている大沼理事長も、「最近の傾向は白、グレー、黒っぽい色などがはやり、くすんだ色が主流だった。またデザインは王朝風からミリタリールック、ロボット、マンガ的なものと何でもありになっている。だから中央アジアのこんなに新鮮な感じで、華やかでイタリア的な明るい色の衣装は印象的だし、インパクトがある。しかも、中央アジアの伝統的デザインでなく、現代的なセンスを取り入れているので、今後うまくマーケティングをすれば、世界ではやる可能性は十分にある」、と述べていたほどだ。


――駐日大使も感激 ―――
 また大勢見学に来ていたウズベキスタン留学生や在日ウズベク人たちも一様に、

 「私たちが国で見慣れているアトラス織りを利用した民族衣装と、今日みせてもらった服とはまるで違った印象だった」
 「こんなに優雅で豪華、明るく、また可愛らしいデザインをみると、自分たちが民族的な装いを固定的にとらえていたことを自覚させられた」
 「もっと自由な発想で楽しくデザインすれば、従来とは全く違った印象の服になるんだなと衝撃をうけました」

と興奮した様子だった。とくに裏地にアトラス織りを使ったセンスなどに感心したようだ。
 大沼理事長は、「今日のデザインで銀座などを歩いたら、みんなうらやましがり振り返るんじゃないか」と述べ、「うちの学生たちのファッション感覚にも、いい刺激を与えてくれたと思う」と嬉しそうだった。

 それにしてもファッションショーの実現には、大変な人達の支えのうえに成り立っていることを実感させられた。たとえば「繋がる」のシーンだけでも衣装のデザイン、縫製などのほかにヘアメイク、スタイリング、シーン演出、音響、照明、映像制作、舞台・会場、広報、全体企画、シーン長、フィッティング、モデルなどといった役割分担があり、1 シーンを行うにも総勢で 20 人を超す人々がたずさわっていた。これが 12 シーンあり、2 日間で 7 ステージをこなすわけだからそのかかりつきの人員だけで延べ 1500 人がかかわる勘定だ。その体制を細かく知った時、当協会でファッション・ショーの企画を出したものの、自分達の力だけでは到底実現できなかったことだな、とあらためて文化学園に感謝した次第である。


――プレゼン力とマーケティングの大切さ――
 もうひとつ思い知ったことは、デザインなどソフトの力である。映像と音楽がバックに流れ、舞台でスポットライトを浴びて衣装を見せるその演出だけで、もう普段と違った世界に連れ込まれた気がするし、同じアトラス織りの素材ながらデザインひとつで、普段見慣れていたウズベキスタン衣装とはまったく違ったイメージとなり、多くのウズベキスタン人を驚かせた。デザインやプレゼンテーションのやり方ひとつで、人々への印象やアピールがこうも違うものかと感じ入った。

 日本人はプレゼンやデザインなどのソフト力が弱いとされてきた。戦前戦後とも丈夫で長持ちし、品質と価格の安い良品を作ることがモノ作りの基礎、本質と教え込まれてきた。しかし、人々の生活が豊かになり、製造業が高度化してくると、もはや高度な一定の質の製品提供は当たり前で、そのほかにデザインやセンス、プレゼン能力が問われる時代になってきたのだ。日本にはすぐれた着物文化から発するデザイン、センスの素晴しさや和食文化、伝統工芸、伝統文化、四季と自然に恵まれた観光文化など様々のすぐれた素材が沢山ある。まさに 2 千年以上の歴史がはぐくんだ感性と文化といえよう。

 しかし明治維新以降、「富国強兵」、「殖産工業」、「科学・技術立国」、「輸出立国」などをスローガンに掲げて高度成長を遂げてきたものの、日本の文化の良さに目をつけて、これを産業戦略、ブランド化に生かす手法が軽視されてきたように思う。

 また、マーケティングの力も重要だ。日本の食糧輸出は年間 3 千億円程度だが、どの国が何を欲しているかというマーケティングが高度化すれば、世界に冠たる和食文化の素材である日本の農産物、水産物、畜産物などはもっと売れるはずだ。現に日本の商社は、日本を通さない A 国と B 国などの第三国貿易で大変な売り上げを達成しているのである。

 ウズベクなど中央アジアのファッションは、アフガニスタンのカルザイ大統領が長い緑色のショールを首からかけていたことで一挙に有名になったが、ウズベクのシルク、綿などを使った華やかで七色の明るいアトラス織りのデザイン、センスのあふれる衣装を作製し、マーケティング調査をしっかりすれば、ブームを巻きおこすことも夢ではないような気がしてきた。日本もクールジャパンといわれる分野でもっとマーケティング力などをつけ、海外に打って出たら新局面が開けるのではなかろうか。

2008年05月11日(掲載)
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