協会の活動状況・会員からの寄稿


シンポジューム・イスラムと IT        
    「シルクロードを結ぶネットワーク」に参加して


 以下は 2007 年 12 月2日(日)に早稲田大学・小野梓記念講堂で行なわれた「シンポジウム・イスラムとIT『シルクロードが結ぶネットワーク』」の報告書です。


 結論から先に言うと大変面白く、かつさまざまな問題を提起するシンポジュームであった(以下、その理由)。

1 シルクロードで結ばれたエリア(中央アジアも含めて)を人文科学的にどう読み解くかが基本的な課題であり、その解のために科学史、考古学、歴史学からのアプローチがなされたこと。
2 諸先生が地道な研究領域から発言し、それが歴史科学の今と方向性を示していたこと。
3 新しい歴史学的視点からシルクロード文化圏とも呼べる歴史の空白地帯が、今後埋められると感じたこと。

 ただしタイトル「シルクロードを結ぶネットワーク」は適切な表現ではなく時流に迎合したタイトルだと思った。
 それよりも IT は素直に「インフォメーション&テクノロジー」――「情報=知」と「技術=テクネとアルス」の総体――と定義し、文化論として呼びかけた方がより興味を喚起し集客にもつながったのではないか。
 また講師の一人がウズベキスタン金融財政アカデミーの方だったことで「経済」問題のセミナーと誤解を招いた。

 さらに情報発信側は一般にこのエリアが「無知」「無関心」であることをもっと直視すべきである。かつて東洋史学では中国、アラブと並んで中央アジアは研究対象領域とされていたが、現在はこうした対象から外されている。当然、無知の土壌となる。
 「同時多発テロ事件」が中央アジアやイスラム圏を認知の域に高めたが、それまでは一般の日本人にこの地域は存在すら認識されていなかった。このことは「無い」と同じである。しかしいま、こうした白地図にデッサンが試みられている。そしていつしか偏見を超えた歴史が語られるであろう。
 そのためには学際を超えた知のコラボレーションとそれによるゼロベースからの知見づくりが必要である。そしてこの努力が現代の知への挑戦でもある。

 午後からのディスカッションフォーラムでは、客員のタトヤナ・ヤナ・ワガノワ先生がロシア以前のトルキスタンとその文化の記述に関わった西欧側の研究者たちを紹介したことが興味深かった。しかし同時に近代歴史――西洋起点の植民地支配的な視点の歴史――がこれからの中央アジアの歴史記述にとっての大きな挑戦課題であることも実感した。
 したがって大谷探検隊に見られるかつての東洋史が描いた日本の国民的ロマンも、列強支配の流れに沿ったもので、中央アジアの歴史にとっては清算すべき遺産かもしれません。

 さて、私とこのシンポジュームとの出会いですが、母校のキャンパスを散歩していた折、構内の立て看板で偶然目にしたのがきっかけでした。まさに偶然に感謝です。
 小野梓講堂地下での講演を聴いて軽い興奮のまま、地上に出ると外はもはや夕景。晩秋の空のもと、黄金色に銀杏に彩られた大隈講堂が目の前に聳えていました。

【補 遺】
 このシンポジュームの中身については主催者側から近々レジュメが出される予定だとのことで、詳細はそれを見ていただくのがよいと思います。


宇田 一夫(会員・プランナー)
2008年01月27日(掲載)
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