協会の活動状況・会員からの寄稿


「白いカラス」ムミノフ・アスロール

 長年リシタンの NORIKO 学級で日本語を学んだムミノフ・アスロール(フェルガナ大学経済学部)さんは、2006 年にモスクワで行なわれた「ロシア・中央アジア日本語弁論大会」にウズベキスタン代表として参加し、見事優勝されました。
 ここでは、アスロールさんの日本語弁論大会の原稿「白いカラス」をご紹介します。

 アスロールさんは先日日本に来られ、忙しい日程の合間をぬって当協会の「 2007 年 新年会」にも参加していただきました。

「白いカラス」
   ムミノフ・アスロール(フェルガナ大学 経済学部・リシタン NORIKO 学級)

 人間は、ひとりひとり、考え方が違います。 考え方は、国や地域によっても、いろいろあります。 私は、ウズベク人の考え方について、お話します。

 ウズベクには「マハラ」という、日本の町内会のような、組織があります。 「マハラ」が親代わりになったり、結婚式、お葬式、など、めでたいことや、困ったことなどを、お互いに助けあいます。ひとつのマハラは、3 Km 四方ぐらいの広さで、約 2,000 人ぐらいの人が、住んでいます。
 マハラにもルールがありますが、厳しいものではありません。 どこかに、お葬式や、「ハシャール」という、町の共同作業があるとき、手伝いに出なかったことを、恥ずかしいと思って、マハラの仕事があるときは、どの家でも必ず、誰かが手伝いに行きます。 私は、マハラはウズベクの、大事な宝物だと思います。

 つぎに、ウズベク人の悪いところをお話します。 まず、時間を守らないことです。 仕事中にクロスワード・パズルをしたり、仕事と関係のないことを、何時間も話していることもあります。
 日本では、会社の仕事を、家族より大事にして、会社のために、残業までして、がんばるそうです。どうして、ウズベクでは、そうしないのでしょうか。
 大学では、学生は、ノートを丸めて持っています。それがカッコいいとされているのです。勉強しているふりをしていますが、実際はあまり勉強していません。しっかり勉強している学生は、少ないと思います。私のクラスの半分ぐらいは、そんな学生です。

 もうひとつ、ウズベクでわからないことがあります。それは、国内空港の出発待合室のことです。イスのそばに、灰皿があります。たくさんの人が、タバコを吸っています。それでも、壁には「 NO SMOKING 」の、看板があるのです。
 そのことを、税関の人に、「禁煙なのにタバコをすっています。また、灰皿があるのも、おかしいですよ」と、言いました。その人は、「私の仕事は荷物の検査です」と、逃げてしまいました。また、「責任者の人と話したい」と、言っても無視されました。
 待合室には、タバコを吸わない人や、子供や、女性もたくさんいますから、禁煙は守るべきだと思います。

 いろいろと、ウズベクの悪いところをいいました。皆さん、私の言いたいのは、こんなことを、ウズベクの人々は、どうして問題にしないのか、と言うことです。ウズベクでは、こんなことを言う人を、「白いカラス」と呼びます。 カラスは、ふつうは黒いですが、みんなが傍観している時、一人で問題にするような人を、「白いカラス」と呼びます。社会を変えるきっかけになる、だいじな存在だと思います。
 わたしは、そんな「白いカラス」がたくさん増えることが、ウズベクをよくするのだと思います。

 それでは、「白いカラス」を増やすには、どうしたらいいのでしょうか。
 とりあえず、幼稚園、小学校、中学校、高校でエチケットの教科書を作って指導したり、テレビで知らせたりするのが、いいと思います。また、親たちへの協力も必要だと思います。
 どんどん『白いカラス』が増えれば、いいと思います。まず、私が「白いカラス」になるつもりです。

 私の友達は、「お前は、口先だけでなく、何かやるんだな?」と、言いました。
 私は、今、お話した空港待合室の、喫煙問題に、チャレンジするつもりです。だいたいの計画は考えております。
 もし、来年の今頃、空港の待合室に灰皿がなかったら、「彼は、『白いカラス』になったな」と、思ってくだされば、嬉しいです。

 どうもありがとうございました。
 
2007年2月24日(掲載)
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