協会の活動状況・会員からの寄稿


松嶋さんと上海へ

カイ ケイ(白鴎大学)
 
 今年の1月にNPO日本ウズベキスタン協会の新年会で松嶋さんと知り合いました。松嶋さんは私に90度の礼をされ、「中国の文化が大好き。中国は日本の文化の親。」と言われました。私は非常に心を打たれました。そして、時間がとれたら中国へ一緒に旅行をする約束をしました。
 松嶋さんは今年75歳で、15年前に失明されていますが大変強い生き甲斐をもつ楽観的なおじいさんです。私は彼が失明と同時に沢山の人生の楽しみも失われたと思います。私は人を助ける事が好きです。人を楽しませてあげる事が自分の喜びでもある、そう考えている私は出来れば少しでも松嶋さんを楽しませてあげたいと思いました。
 9月10日を出発の日に決め中国に帰る前に松嶋さんと二回会いアシスタントのトレーニングを受けました。9月10日NWの飛行機で午後6:30成田空港を出発し、夜9:00には上海に到着しました。東京と上海の近さを感じました。迎えに来たのは弟と従姉妹でした。父はレストランで待ち合わせでした。11時ごろ五人揃って食事をしました。松嶋さんは機中で覚えた中国語で父に挨拶をし、自己紹介をしました。父は喜んでいました。従姉妹は日系企業で勤めている為私より日本語が上手でした。私と従姉妹は通訳を担当し時々三人で日本語ばかり話しました。あまり遅くならない様に(実は遅いです)12時ごろ食事を終え、ホテルに帰り、私は最愛の父と三年振りの再会を喜び2時半まで話しました。
 翌朝、弟に見送られ、9時ごろ蘇州へのバスに乗りこみました。車内、松嶋さんは録音テープを回していろいろ質問され、私はあまり流暢でない日本語で答えました。松嶋さんが蘇州で一番興味を持っている場所とは寒山寺でした。寒山寺には日本語のできるガイドさんがいてとても助かりました。入口で記念写真を撮りました。ガイドさんの詳しい説明で寒山寺の設立、寒山寺と日本の関係(静岡県にも寒山寺がある)を聞いて松嶋さんは感激され、寒山拾得の木像の前に吟詩しました。松嶋さんは住職さんが書いた張継の「楓風夜泊」の書を買い、大満足でした。午後2時頃寒山寺を出ました。
 南京への電車の切符を買うため約1時間待ちました。一緒の特級席券を頼んだのに、電車に乗ったら五号車と六号車の席でした。車中では誰も席を譲ってくれなかったので、やむを得ずに、松嶋さんの足元に新聞紙を敷いて正座しました。やっと前の若い女性客が気がついて席を交換してくれました。(電車の車掌さんたちは車輌と車輌の間に座ったままで、私が床に座ったのは誰も無視した。松嶋さんに見えなくて良かったと思いました。)松嶋さんの安全を考えた私はつい「昔は大虐殺があったから、南京に着いたら小さい声で話したほうがいい」といいました。後で考えれば余計な話でした。この一言で松嶋さんは緊張と不安に陥った。
 午後7時、南京駅に着きました。絶え間なく続く人の流れが出口に向かっています。その時雷雨が急に降り始めた。人々がますます混雑になった。タクシーの乗客率は100%だった。混乱の中で一台のタクシーに乗ってホテルに行きました。
 翌朝旅行会社の車が迎えに来ました。当日のメンバーは5人でした。女性運転手と20代のガイドさんともう一名の観光客がいました。松嶋さんは日本人のことを知って私を通じて日本のことを聞かせ、もちろん中国のこともいろいろ話しました。とても平和の雰囲気でした。ガイドさんは、将来もしチャンスがあれば日本に留学に行きたいと言いました。
 車の窓から南京の景色を楽しみました。南京は六朝古都でもあり、古い歴史を持つ都です。明の皇帝朱元璋が建てられた朝天閣から、大明王府、中華門、雨花台、夫子廊、中山陵を回りました。朝天閣の中に陳列してある晋代の物から見ると昔の中国人の服装は日本の着物とそっくりでした。部屋の中の飾りなど特に似ていた。畳とテーブルは日本の家具と全く同じ様子でした。驚いたと同時に日本と中国の関係の奥深さを強く感じました。そして、中華門を尋ねましたが、ガイドさんは南京に来たら是非日本から侵略戦争の事を聞いてもらいたいと言っていました。南京城に入り中華門で日本軍と中国軍との戦いの詳しい説明を聞きました。途中松嶋さんはいろいろ質問しました。私は聞きながら通訳し、なんとも言えない気持ちでした。一方松嶋さんは歴史に対して十分認識していますし、互いに理解できました。最後故国民党の総理孫文の墓参りをしました。私は目の見えない松嶋さんを一歩一歩連れて大変だったけれどとてもいい思い出になりました。
(全文ほぼカイ ケイさんが日本語で書かれたままを掲載いたしました。)
 
2005年12月28日(掲載)
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