協会の活動状況・会員からの寄稿


びんの中の生活

サマルカンド外国語大学 3年 エサノヴァ ディルショダ
 
 一人の男の子が大きいびんを両手で大切そうに持っている。そのびんの中には水が半分しか入っていない。小さい魚が一匹泳いでいる。彼は魚を興味深そうにじっと見つめながら、長いそして古い橋の上にたたずんでいる。橋の下には川が流れているはずだった。その川に水はなく、黒い砂があるだけだった。
 これは2004年のウズベキスタンのカレンダーの中にあった一枚の絵です。私はこの絵を見てショックを受けました。びんの中の半分の水は豊かな川の水が失われていることを象徴しているようです。びんの中の小さい魚が川の中で自由に泳げたらどんなにいいか・・・。長くて古い橋は人生を象徴しているように見えます。絵の中のまだ大人になっていない男の子と、彼の小さい魚をじっと見つめている目。今日という日だけを考えて生活している人間を象徴しているように見えます。彼はどんな大人になるのでしょうか。彼が大人になったら自然はどうなってしまうのでしょうか。ウズベキスタンの自然はだんだん死んでいっている・・・。この絵を見て私の心の中に母なる自然に対する興味が生まれました。
 ある日、日本人の先生が一つのビデオを見せてくださいました。このビデオの話は村のきれいな景色から始まります。
 空は晴れていて、木々は青々として、桜の花が満開です。桜のピンク色が目にまぶしい。美しい春の日です。その桜の木は人間で言うと1000歳ぐらい、高さは18メートルもあります。その大桜は新婦の着物を着ている花嫁のように見えました。この大桜は岡山県のある村に今でも生きているそうです。この村にはお年寄り達しか住んでいません。この村の人々はこの大桜を自分の娘のように大切にしています。冬、雪の中にたたずんでいる大桜に一人のおばあさんが話しかけます。
 「寒くないかい?」
 また、冬の寒さで大桜も凍るといいます。枝が折れているのを見た村の人々は、
 「若者もいないし、この桜も私たちより年をとっちゃったね。」
と言います。
 この村の人々は70代から80代、中には90代のお年寄りもいます。その人々はこの大桜が美しい花を咲かせるために心をこめて生活をしています。また、村の人々の名字もおもしろいです。ここには10軒の家がありますが、そのうち9軒の家の名字は「春木」さんといいます。春になるとこの大桜を見ようと町から花見客がこの村に大勢集まります。この村の人々は大桜を愛し、大桜も村の人々を愛しているのです。この村では大桜と人々が一緒に暖かく、そして長く暮らしているのです。
 母なる自然、私たちの地球。地球はまるいです。私たちはどうやって生活するかによって地球もその姿を変えます。大学の環境学の先生がおっしゃっていました。ウズベキスタンの気候も変わって春でも雪が降っている、と。
 雑誌で読みましたが、日本では車の排気ガスを減らすために、電気や水素で走る車が発明されたそうです。また未来のエネルギー利用計画を立てて、太陽や風、海の波など自然の力を利用したエネルギー開発もしています。ウズベキスタンでも自給自足に近い生活をしたり、びんやボトルなどを捨てないで使うようにしています。家具や電化製品なども日本のようにすぐ捨てずに大切に使っています。環境を守るためにできることはそれぞれ違います。しかし、私たちの気持ちは一つだと思います。川の中で魚が自由に泳いでいる。春には桜の花が満開、そんな景色をいつまでも見ていたいと思いませんか。

「第 2 回ウズベキスタン日本語エッセイコンテスト 2 位入賞」
 
2005年7月05日(掲載)
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